(社説)徴用工問題 歴史再燃防ぐ努力こそ

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社説

2017年8月18日05時00分

 未来志向的な日本との関係を真剣にめざすなら、もっと思慮深い言動に徹するべきだ。

韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が就任100日を迎えて開かれた、きのうの記者会見である。

植民地時代の元徴用工らへの補償問題について、これまでの韓国政府の見解から逸脱するかのような認識を示した。

個人の賠償請求権を認めた韓国の裁判所の判断に触れ、「政府はその立場から歴史認識問題に臨んでいる」と語った。

文氏は、その2日前の植民地解放の式典でも、慰安婦問題徴用工問題を並べて取りあげ、「日本指導者の勇気ある姿勢が必要」だと訴えている。

その真意には不明な点もあるが、歴史問題はとくに慎重な扱いを要する政治テーマである。文氏の言動には、あやうさを感じざるをえない。

文氏は徴用工問題の流れをどう整理して発言しているのだろうか。慰安婦問題とはひとくくりにできない経緯がある。

日本政府は1965年の請求権協定で、すべての問題が解決済みとしてきた。それに対し韓国の盧武鉉(ノムヒョン)政権は05年、慰安婦問題などの課題はなお残るとしつつ、徴用工については問題視しない見解をまとめた。

当時、盧政権の大統領府幹部だった文氏自身が、この作業にかかわった。徴用工問題については韓国政府が救済を怠っていたと認め、慰労金の支給など独自の支援措置をとってきた。

だが、5年前に大法院(最高裁)が個人の請求権を認める見解をだした。それを受けて「日本企業に賠償請求は可能」との司法判断が急速に広がった。

日本が植民地支配により、多くの人々に多大な損害と苦痛を与えたのは事実である。

日本側は法的な問題に閉じこもらず、被害者たちの声に真摯(しんし)に向きあい、わだかまりをほぐすための方策を探り続けるのは当然の責務だ。

ただ、歴史問題は一方の当事者だけで解決できるものではない。今を生きる両国民の距離を縮めていくには、双方の政治指導者の深慮と行動を要する。

韓国ではこの夏、徴用工らを題材にした映画が人気だ。ソウルなどでは徴用工の像が建てられ、いわゆる少女像のレプリカを乗せた路線バスも走る。

そんな世論が文氏に響いているのかもしれない。しかし政治指導者は、風向きを読むだけでなく、世論を未来に導く説得の時にこそ真価を問われる。

歴代政権が積み上げた歩みをまず尊重する。それが歴史問題の再燃を防ぐ出発点である。

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